中央銀行は複数極の準備制度に備えており、ドル建て保有を削減し金の配分を増やす計画が過去最高となったことがOMFIFの調査で明らかになった。
中央銀行は複数極の準備制度に備えており、ドル建て保有を削減し金の配分を増やす計画が過去最高となったことがOMFIFの調査で明らかになった。

地政学的リスクが複数極の準備制度への構造的シフトを促すなか、今後10年間でドル建て保有を減らす計画の中央銀行が増やす計画を上回るのは初めてとなることが、公的金融機関フォーラム(OMFIF)の年次調査で明らかになった。
約10兆ドル(約1500兆円)の資産を運用する90の機関を対象にした同調査で、OMFIFは「中央銀行は金を防衛的なヘッジではなく、中核的な戦略準備資産と見なす傾向が強まっている」と指摘した。
調査によると、中央銀行の82%が金現物を保有しており、正味30%が今後1〜2年の間に配分を増やす計画。そのうち61%は、2027年6月までに金価格が1オンスあたり5,000〜6,000ドルの水準で取引されると予想している。金購入の主な動機は戦略的な考慮によるもので、回答者の51%が地政学的リスクのヘッジを主な理由に挙げた。
このシフトは為替市場とソブリン債需要に影響を及ぼす。中央銀行の約79%、公的投資ファンドの60%が、世界の通貨制度は複数極の準備枠組みへ移行しつつあると回答。ユーロや中国の人民元に加え、ノルウェークローネ、ニュージーランドドル、英ポンドへの関心も高まっている。ただ、回答者はユーロと人民元がドルの完全な代替通貨となるには構造的な課題が依然としてあると指摘した。
90の中央銀行、ソブリン・ウェルス・ファンド、公的年金基金(運用資産総額約10兆ドル)を対象とした今回の調査は、準備資産管理の転換点を示す。世界の基軸通貨であるドルをめぐる政治的リスクを受け、機関は長期的な配分戦略の見直しを迫られている。米金利の上昇や最近の米イラン紛争時の安全資産需要に支えられ、ドルは今年約3%上昇しているものの、構造的な変化の兆しは明確だ。
金の戦略的転換
OMFIFによると、金は持続的な地政学的な不確実性と市場ボラティリティの高まりの中で、防衛的なヘッジから中核的な戦略準備資産へと移行している。中央銀行の82%が保有する金は、今後1〜2年で最も増加が見込まれる資産クラスとなっている。投資家がインフレや金融市場の不確実性に対する保護を求めるなか、金価格はここ数カ月で何度も最高値を更新している。
新興市場に新たな資本流入
調査ではまた、ソブリン投資家の選好に顕著な変化が見られた。公的ファンドの約38%が新興市場への配分を増やす意向で、前年の27%から大幅に上昇した。対照的に、先進国へのエクスポージャー拡大への関心は25%に低下し、前年の47%から減少した。インフラと不動産が選好される資産クラスとして浮上し、公的ファンドの約60%が今後2年間で投資を増やす計画だ。
多様化の傾向にもかかわらず、米国と中国は急速に拡大する人工知能(AI)分野でのリーダーシップを主因に、世界で最も魅力的な投資先であり続けていることが調査で分かった。
中央銀行におけるAI導入加速
中央銀行の3分の2超が近い将来にAI導入を拡大する計画だが、現状のAI活用に満足していると回答した先進国中央銀行はゼロだった。機関は主にデータ分析、予測、バックオフィス業務にAIを活用しているが、導入状況は不均一だ。先進国の中央銀行の約89%が既にAIを活用しているのに対し、新興市場では44%にとどまる。
調査は、ドルが近いうちに基軸通貨としての優位性を失う可能性は低いものの、中央銀行は準備ポートフォリオがより多様化し、テクノロジー主導となり、単一の世界通貨への依存が低下する世界に備えつつあることを示唆している。この構造的シフトが加速するか安定化するかの分かれ目となる今後12〜24カ月は、金価格が機関投資家の確信度を示す重要なバロメーターとなりそうだ。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。