日本の半導体装置メーカーは、3年間の円安と急増するAI需要を追い風に、利益率拡大につながる価格引き上げを推進している。
日本の半導体装置メーカーは、3年間の円安と急増するAI需要を追い風に、利益率拡大につながる価格引き上げを推進している。

日本の半導体装置メーカーは、3年間にわたる円安とAI需要の急増を活用し、利益率を押し上げる価格戦略を展開している。
東京エレクトロンとSCREENホールディングスは複数段階の値上げを実施し、売上総利益率50%超、営業利益率35%を目標としている。3年間で約30%進行した円安とAI関連需要が、日本企業に希有な価格決定力をもたらしている。
「東京エレクトロンは価格改善を最優先の戦略的課題と位置づけ、利益率向上に向けた明確な3段階計画を進めている」と、バーンスタインのサラ・ルッソ氏率いるアナリストチームはリサーチノートで述べた。
第1段階は、これまで無償としていた迅速納入対応へのプレミアム価格設定を対象とする。第2段階では、インフレ、原材料費、人件費上昇に対するサーチャージの交渉を行う。第3段階では、技術向上と機能追加を理由に新製品の価格を引き上げる。SCREENも同様の2段階戦略を採用しており、インフレ調整については既に顧客の了承を得ているという。SKハイニックスは既に3~4%の値上げ要請を受けており、交渉が意向から行動へと移行したことを示している。
この価格転換により、半導体装置株の最近のパフォーマンス低迷が反転する可能性がある。同セクターは過去2カ月で約30%上昇したが、ルネサスエレクトロニクスの83%高、イビデンの126%高、SUMCOの95%高に遅れを取っている。値上げの成功は利益率を直接拡大し、投資ストーリーを「循環的回復」から「利益成長拡大」へと転換させるだろう。
円安が価格交渉の扉を開く
価格決定力の根源は為替市場の構造変化にある。円は過去3年間で対ドルで約30%下落し、日本拠点の装置メーカーがグローバル顧客との契約再交渉を行う有力な根拠を生み出している。東京エレクトロン、SCREEN、国際電気はいずれも円建てで収益を計上する一方、サムスン電子、TSMC、SKハイニックスなどの顧客は主にドル建てで事業を展開している。
持続的な為替圧力にもかかわらず、日本の装置メーカーは歴史的に価格引き上げに消極的だった。しかし、その姿勢は今や変化した。バーンスタインは、国際電気も円建てのコスト構造を共有していることから、東京エレクトロンやSCREENと同様の価格戦略を採用すると予想している。
この影響は特に前工程の装置メーカーで顕著だ。円とドルのミックス価格設定を採用し、既に大幅な利益率拡大を達成しているディスコ、レーザーテック、アドバンテストは、追加の値上げによる恩恵は限定的とバーンスタインは指摘する。
ASMLとBesiは製品アップグレードがより大きな利益率向上要因に
欧州の装置リーダー企業にとっては、製品サイクルのアップグレードが為替調整よりも強力な価格決定要因となる。ASMLホールディングの次世代EUVリソグラフィ装置の平均販売価格は、現行モデルより約60%高い。バーンスタインは、これによりEUVの売上総利益率は60%を大幅に超えると試算している。
バーンスタインはASMLとBesiの両社に「アウトパフォーム」評価を維持し、目標株価をそれぞれ1,700ユーロと280ユーロに設定した。供給逼迫を背景に、ASMLは迅速納入に対してもプレミアム価格を追求する可能性があるが、製品主導の値上げが依然として主力の利益率向上要因だと指摘している。
投資家にとっての意味
東京エレクトロンの株価は72,760円で、前日比7%上昇している。同社のコンセンサス予想では、2029年3月期の売上総利益率は48%、営業利益率は30%と、経営陣の目標である50%と35%をいずれも下回っており、値上げ戦略が成功すれば上方修正の余地があることを示唆している。SCREENの2028年度のコンセンサス営業利益率27%も、同社目標の30%を下回る。
バーンスタインは東京エレクトロンと国際電気を「アウトパフォーム」と評価し、目標株価をそれぞれ59,200円と8,240円としている。SCREENは「マーケットパフォーム」とし、目標株価は12,600円。この違いは、東京エレクトロンと国際電気はコンセンサス予想に対して値上げの余地がより大きい一方、SCREENは中国エクスポージャー—主要顧客であるスウェイサーのDRAM投資の喪失を含む—が不確実性を高めているとの見方を反映している。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。