日本による4月の7.4兆円の円買い介入は、円を1986年以来の弱さに押しやる構造的要因に対抗できなかった。
日本による4月の7.4兆円の円買い介入は、円を1986年以来の弱さに押しやる構造的要因に対抗できなかった。

日本による4月の7.4兆円の円買い介入は、円を1986年以来の弱さに押しやる構造的な力に対抗できなかった。
円は6月30日、1ドル=162円台まで下落し、1986年12月以来の低水準を記録した。地政学的ショック、金利差の拡大、そしてワシントンからの貿易圧力が重なり、日本の政策当局者には有効な選択肢がほとんど残されていなかった。日本銀行(BOJ)が6月に政策金利を31年ぶりの高水準に引き上げた後も円の下落は続き、資本流出とエネルギー輸入コストに起因するトレンドを覆すには、金融引き締めだけでは限界があることが浮き彫りとなった。
「市場は政府に流れを迅速に転換できる手段がほぼないことを明確に認識しており、それが円安が進む一因だと考える」と、NLI総研のチーフエコノミスト、上野剛志氏は指摘する。
日本の財務省は4月、過去最大となる11.5兆円を投じて円買い介入を実施した。この動きは一時的で急激な円高をもたらし、数秒間で円は対ドルで約2円上昇した。しかし6月初旬には再び160円台に戻り、6月30日には162円を突破し、一時162.40円まで上昇した。日本の外貨準備高は5月末時点で1.09兆ドルに上り、政府にはさらなる介入のための十分な火力が残されているものの、その効果に対する信頼は薄れつつある。
円の構造的な弱さは、日米の金利差の大きさに起因する。BOJが6月に31年ぶりの利上げを実施した後でも、日本の金利は国際的にみれば依然としてゼロに近い。この金利差は大規模なキャリー・トレードを誘発し、投資家は低金利で円を借り入れ、その資金をより高利回りのドル建て資産に振り向けることで、円に持続的な売り圧力をかけている。BOJが2024年3月にマイナス金利を解除して以降、FRBとの政策金利差は半分以上縮小したが、それでも円は軟調を続けており、より深層の要因が作用していることを示唆している。
地政学リスクとエネルギー問題
日本は原油の95%以上を中東に依存しており、米国、イスラエル、イランを巻き込む軍事紛争による供給途絶に対して極めて脆弱である。原油価格の上昇は、日本のエネルギー輸入コストを押し上げ、ドル需要を直接的に高め、円安を加速させる。この紛争はまた、米国の金融政策に対する市場の見通しを変え、利下げ観測から利上げ観測へとシフトさせ、ドルの魅力をさらに高めている。
介入を巡るジレンマは、政治的な制約によってさらに複雑化している。ドナルド・トランプ前米大統領は長年にわたり、日本が貿易優位を得るために円相場を操作していると非難してきた。日本は現在も米財務省の為替監視リストに掲載されている。2024年9月の日米共同声明は介入を過度の変動局面に限定しており、東京の外交的な独自行動の余地を狭めている。スコット・ベッセント米財務長官は、望ましい解決策はBOJが独自に利上げを進めることだと示唆しており、事実上、米国は更なる円買い介入を支援しない姿勢を示している。
今後の展望
畑貴子首相にとって、円安は国内政治における重しとなっている。前任の首相2人は、弱い通貨に起因する生活費上昇に対する国民の不満が高まったことにより、政権の座を追われた。畑政権は6月、人工知能(AI)、半導体、防衛、造船への民間投資を促進する戦略計画を発表したが、これらの施策が日本の経済軌道を変えるには数年を要する。
短期的には、7月下旬のBOJの次回会合が、更なる引き締めのシグナルを示すかどうか注目される。翌日物金利スワップ市場では、15ベーシスポイント(bp)の利上げ確率は約40%と見込まれている。しかし、米国が高金利を維持し、地政学的リスクがエネルギー価格を押し上げ続ける限り、それでも円安を止めるには不十分かもしれない。前回円がこの水準で取引された1986年12月には、プラザ合意による協調介入がトレンドを反転させた——しかし、今日の分断された世界情勢において、そのような外交的解決策は実現不可能に思われる。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではありません。